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POM樹脂とは

POM樹脂(ポリオキシメチレン)は、別名アセタール樹脂とも呼ばれるエンジニアリングプラスチック(エンプラ)の一種です。米国デュポン社が開発した「デルリン(Delrin)」という商品名でも広く知られています。高い機械的強度、優れた耐摩耗性、低い摩擦係数、そして化学的安定性を兼ね備えた、産業界で幅広く使用される高性能樹脂です。

POM樹脂は1950年代に工業化され、以来70年以上にわたって精密機械部品、自動車部品、電子機器、医療機器、食品加工機器など、信頼性が要求されるあらゆる分野で使用されてきました。その実績と信頼性の高さから、ナノバブル発生装置「WHOLE IN ONE」の心臓部であるキャビテーションノズルの素材としても採用されています。

POM樹脂の主な特性

高い機械的強度

POM樹脂は、プラスチックでありながら金属に匹敵する強度を持っています。引張強度、曲げ強度、衝撃強度のいずれも汎用プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)を大幅に上回ります。WHOLE IN ONEのノズル内部では水流が高速で流れ、キャビテーションによる気泡の生成・崩壊が繰り返されますが、POM樹脂の高い強度がこの過酷な環境に耐えることを可能にしています。

低摩擦・優れた耐摩耗性

POM樹脂の摩擦係数は樹脂の中でもトップクラスに低く、潤滑剤なしでも滑らかに動作します。この特性は、水流が常に接触するノズル内壁の表面品質を長期間維持するのに不可欠です。摩耗が少ないということは、微粒子の発生も少なく、水質への影響が最小限に抑えられるということを意味します。

耐薬品性・耐水性

POM樹脂は、多くの有機溶剤、油脂、弱酸、弱アルカリに対して優れた耐性を持ちます。水道水に含まれる残留塩素に対しても安定しており、長期間水に浸漬されても劣化しにくい特性があります。水道用器具の素材として最も重要な「水に溶け出さない」という性質を高いレベルで満たしています。

寸法安定性

POM樹脂は吸水率が非常に低く(0.2〜0.4%程度)、温度変化や湿度変化による寸法変化が極めて小さい素材です。キャビテーションノズルの内部構造はマイクロメートル単位の精密設計が求められるため、この寸法安定性は製品の性能を長期間維持するために不可欠な特性です。

食品接触適合性

POM樹脂には食品衛生法やFDA(米国食品医薬品局)の基準に適合したグレードが存在します。食品加工機械の部品や飲料用ディスペンサーの部品としても使用されており、飲料水との接触においても安全性が認められています。WHOLE IN ONEのノズルに使用されているPOM樹脂も、水道水との接触を前提とした安全なグレードが選定されています。

なぜWHOLE IN ONEにPOM樹脂が採用されているのか

ナノバブル発生装置のキャビテーションノズルには、以下の条件を同時に満たす素材が必要です。

1. 水道水に安全であること:JWWA認証JIS規格の浸出性能試験をクリアできる素材でなければなりません。POM樹脂は有害物質の溶出が極めて少なく、この条件を満たしています。

2. 精密加工が可能であること:キャビテーションを効率的に発生させるには、ノズル内部の流路形状をマイクロメートル単位で精密に加工する必要があります。POM樹脂は切削加工性に優れ、複雑な内部構造を高精度で形成できます。

3. 長期間の耐久性があること:WHOLE IN ONEは10年保証の製品です。POM樹脂の耐摩耗性と耐水性により、10年以上にわたって初期性能を維持することが可能です。

4. キャビテーションに耐えること:キャビテーション気泡の崩壊時には局所的に非常に高い圧力が発生します。POM樹脂の高い耐衝撃性と疲労強度が、この繰り返しの衝撃に耐える構造を実現しています。

WHOLE IN ONEの素材構成

WHOLE IN ONEのノズルはPOM樹脂だけで構成されているわけではありません。水道管との接続部には真鍮(黄銅)が使用されており、水道用継手との確実な接続と耐久性を確保しています。また、一部の構造部品にはステンレス鋼(SUS304等)が使用されており、耐食性と強度を両立しています。

これらの金属素材もJIS規格の浸出性能試験をクリアしており、POM樹脂と組み合わせることで、安全性と耐久性を高いレベルで両立した製品構造を実現しています。

他のプラスチック素材との比較

ポリプロピレン(PP):コストは低いものの、機械的強度と耐摩耗性がPOMに劣ります。精密加工にも向かず、キャビテーションノズルの素材としては不十分です。

ナイロン(PA):強度は高いものの、吸水率が1〜3%と高く、水に浸漬されると寸法が変化してしまいます。水道用器具のように常時水に触れる用途には適しません。

ポリカーボネート(PC):透明性と耐衝撃性に優れますが、耐薬品性が低く、残留塩素によって劣化する可能性があります。

PTFE(テフロン):耐薬品性は最高レベルですが、機械的強度が低く、精密加工も困難です。コストもPOMの数倍以上です。

これらと比較すると、POM樹脂は強度・耐摩耗性・耐水性・加工性・安全性・コストのバランスが最も優れており、キャビテーションノズルに最適な素材と言えます。ウルトラナノバブルについて詳しくもぜひご覧ください。

さらに深く知る

POM樹脂には大きく分けて「ホモポリマー」と「コポリマー」の2種類があります。ホモポリマー(代表的な商品名:デルリン)はオキシメチレンのみで構成され、より高い機械的強度と剛性を持ちます。コポリマー(代表的な商品名:ジュラコン)はオキシメチレンにエチレンオキサイドを共重合させたもので、熱安定性と耐薬品性に優れています。水道用器具には耐薬品性と長期安定性を重視してコポリマーが選択されることが一般的です。

キャビテーションノズルの設計において、POM樹脂の表面粗さ(表面仕上げ)も重要な要素です。POM樹脂は切削加工で非常に滑らかな表面が得られるため、ノズル内壁の水流抵抗を最小限に抑えながら、狙った位置で正確にキャビテーションを発生させることが可能です。この精密さが、WHOLE IN ONEの高いナノバブル生成効率を支えています。

なお、POM樹脂の寿命は適切な使用条件下では数十年に及びます。常温の水道水という穏やかな環境で使用するWHOLE IN ONEの場合、素材の劣化による性能低下は事実上発生しないと考えてよいでしょう。これが10年製品保証を可能にしている技術的裏付けの一つです。

別名
アセタール(デルリン)
特性
高強度・低摩擦・耐薬品性
用途
ノズル内部構造

スタッフの声

田中 さゆりカスタマーサポート

「プラスチック製で大丈夫?」とご心配されるお客様もいらっしゃいますが、POM樹脂は食品機械にも使われる安全なエンジニアリングプラスチックです。JWWA認証の浸出試験もクリアしていますので、飲料水としても安心してお使いいただけます。金属のように錆びることもないので、メンテナンスフリーなのも嬉しいポイントです。

木下 大輔設置工事スタッフ

設置現場では真鍮やステンレスの部分で水道管と接続しますが、本体のノズル部分はPOM樹脂製なので非常に軽量です。施工時の取り回しが良く、限られたスペースでも作業しやすいんです。それでいて耐圧性能はしっかりしているので、設置後の信頼性も高い素材だと現場目線でも感じています。

鈴木 健一製品開発エンジニア

キャビテーションノズルの素材選定は開発の要でした。ナノバブル生成効率を最大化するには流路形状をミクロン単位で制御する必要があり、POM樹脂の加工精度は不可欠でした。さらに、キャビテーション気泡の崩壊衝撃に10年以上耐える疲労強度、水道水への安全性——すべてを満たすのがPOM樹脂だったのです。